広州市壁

広州市は広東省の省都で、こんにち大発展する中国沿岸部の中心都市である。この地が開かれたのは、紀元前9世紀の周代のこと。当時は中華文明とは異質の存在だった楚や百越の人々によって“楚庭”という都市が造られたという。 秦漢期 秦の始皇帝は紀元前214年…

ラサファ―砂に埋もれる聖都―

シリア中央部、ユーフラテス川の西26kmの地点に、ラサファ(Rasafa,Resafa)という都市遺跡がある。 周囲は見渡す限りの砂漠で、風の吹き渡る音しか聞こえない寂しい場所だが、この街の歴史は古い。 アッシリア時代 歴史書に初めて登場するのは紀元前9世紀、ア…

パリ近郊の中世都市・サンリス市壁

パリ北駅からクルイユ行きの列車で約30分。 競馬で知られるシャンティイの街からさらにバスで20分の所に、中世のまま取り残された町が残る。 サンリス(Senlis)、というこの町の起源はガリア人(ケルト人)の村落にさかのぼるが、本格的な都市建設はローマによ…

紹興城壁

浙江省の中規模都市・紹興。 紹興酒で知られるこの街は、夏王朝時代の禹が治水に訪れた時から歴史が始まる。 紀元前490年には“臥薪嘗胆”の故事で知られる越王勾践が都を置き、始皇帝の統一後は会稽郡が置かれた。 隋唐期に越州が置かれ、さらに南宋の紹興元…

ローマ・セルウィウスの城壁

ローマ最古の城壁、セルウィウスの城壁。紀元前509年に第6代ローマ王セルウィウスが造築した。 ローマの七つの丘を囲む全周8kmの城壁は、後世の物と違い自然石を加工して出来ている。 城壁建造後、市内の人口は大いに増加し次第に城壁外に住居が広がっていく…

エルサレム市壁-起源を聖書にたどる-

世界最大の聖地エルサレム。 市壁に囲まれた1平方キロに満たない旧市街は、「エルサレムの旧市街とその城壁群」として世界遺産に登録されている。 イスラエル以前 エルサレムの地には紀元前3000年ころから人々が住み始め「神殿の丘」の南側からは紀元前18世…

瀋陽・北陵城壁

瀋陽は17世紀初頭、清朝最初の都が置かれ、盛京と名付けられた。 郊外には初代・太祖ヌルハチと2代・太宗ホンタイジの二人の皇帝が眠る陵墓がある。 前者を福陵(東陵)、後者を昭陵(北陵)という。今回紹介するのはホンタイジとその皇后の眠る昭陵。 建立は順…

バチカン市国市壁

バチカン市国の起源は4世紀、使徒ペトロの墓の上に造られた聖堂にある。 この聖ピエトロ大聖堂はローマ市を囲むアウレリアヌスの城壁の外、テベレ川を挟んだ対岸に位置し、元来無防備のままであった。 しかし教皇レオ4世(847-855)の時代になるとサラセン人の…

無錫の城壁撤去、そして復元計画

江蘇省南部の水郷都市・無錫。 太湖に面した旧市街を取り囲んでいた城壁は、1950年撤去された。無錫は3000年以上の歴史を持つが、「無錫県」が置かれたのは漢高祖五年(BC202年)のこと。 県、ということは必然的に城壁を持つことになる。 当時の城壁は版築で造…

韓国・晋州城壁

韓国南部、慶尚南道の晋州。洛東江支流、南江脇の丘陵に造られた城塞である。朝鮮半島も他のユーラシア半島各都市と同じく、都市は城壁に囲まれていた。 今日では完全な城壁が残り、内部に生活空間が残っているものとしては全羅南道の楽安邑城程度しかない。…

トルコ、アナドル・カヴァウのヨロス城城壁

イスタンブールの金角湾にかかるガラタ橋から、ボスポラス海峡を北上するクルーズ船が出ている。 ボスポラス海峡はトルコのアジア側とヨーロッパ側を隔てているが、クルーズ船は両岸をジグザグに黒海まで北上していく。その終着点がアナドル・カヴァウという…

上海城壁古写真

明嘉靖32年(1553年)に倭寇防備の為築かれた上海県城。辛亥革命後の1914年、北西部の一角(大境閣)を残して完全に撤去、濠も埋め立てられ環状道路となった。「天円地方」の原則から、基本的に中国の城壁都市は方形であるが、江南から南では円形城壁も多い。上…

万里の長城

万里の長城は約5000kmに渡って続くが、ここは北京北東約100km付近の慕田峪(ぼでんよく)長城。観光客が一番多いのはそれより北京に近い八達嶺長城だ。 より当初の姿に近い(過剰に“復元”されていない)との触れ込みだったのでこちらを訪れたが、十分に“復元”さ…

シリア・忘れられた城塞都市カサール・ヒール・シャルキ

シリア中部、有名なパルミラ遺跡からアレッポ方面に北上すること120km。 何もなかった砂漠の中に突然高い城壁が見えてくる。 これがQASR AL-HEIR ASH-SHARQI(カサール・ヒール・シャルキ)という双子の城塞都市だ。 8世紀ウマイヤ朝時代の隊商都市と見られ…

イタリア・シエナの市壁

イタリア・トスカーナ地方の都市、シエナの市壁。 シエナと言えばフィレンツェと並ぶ有力都市国家であったが、最終的にメディチ家の治めるトスカーナ大公国の統治下に入った。貝殻型の“世界一美しい”と呼ばれるカンポ広場を中心に中世の町並みがそのまま残る…

アイルランド・ドゥンエンガス

アイルランドの西端・ゴールウェイから船で2時間。アラン諸島の主島・イニシュモア島に着く。ケルト文化の濃厚に残るこの島の一番の見所が、このドゥン・エンガス。 3100年前に作られた城塞と言われている。アラン諸島は岩ばかりの島で、「土壌が無い」と言…

成都城壁

蜀漢の都成都。 三国志の時代には二重の城壁に囲まれていたが、この写真に見られる清代再建の市壁は全長11kmに及ぶものの一重であり、主要各門には甕城が設けられていた。1958年、毛沢東の「交通の障碍となる」との指摘を受け本格的に撤去が進められ、現状で…

カンボジア・アンコールトム城壁

12世紀、クメール朝のジャヤバルマン7世が築いた都城。 中心には“クメールの微笑”として知られるバイヨン寺院がある。城壁の高さは約8m。 2004年9月訪問。

瀋陽・大東門

瀋陽(奉天)の大東門。正しくは撫近門という。 瀋陽は満州族の故地にあり清帝国最初の都・盛京として、清代を通じて重視された。そのため城壁・城門の規模も雄大であり、門の扁額に満州文字が使われているのも特徴的であった。内城は方形、外城は円形というのも…

スペイン・カルモナ市壁

スペイン・アンダルシア地方の小都市、カルモナの市壁。カルモナはセビリアから約30km離れた小高い丘に作られた都市で、最高部にはペドロ残国王の築いた館が、パラドール(城館ホテル)として開放されている。天正遣欧使節や支倉常長らも滞在した都市としても…

スリランカ・シーギリヤの城壁

スリランカの旧都・シーギリヤの城壁。 5世紀に即位したシンハラ朝65代カッサパ狂王によって築かれた王城である。 平原にそびえる200mの巨岩の上に王宮、庭園、寺院などが造られた。訪問時は復元作業が進行中だった。2003年12月訪問。

ドバイ市壁

バブルが崩壊した、と最近話題のドバイ。 旧世紀半ばまでは真珠と漁業だけが産業の田舎町だったドバイも、他のアラブ都市と同じように市壁に囲まれていた。 現在では巨大なビルの中に埋もれてしまっているが、ごく一部、ドバイ博物館脇に残存する。 ドバイ博…

チェコ・チェスキークルムロフ市壁

チェコ南部の小さな街チェスキークロムロフは、蛇行した河に囲まれた旧市街全体が中世の姿そのままで残り、世界遺産に指定されている。重火器が戦争の主役になる前の市壁の姿を留めているが、残存部分はわずか。上:街の全景 中上:市門 中下:外城壁 下:市…

チェコ・プラハの旧市街城門「火薬塔」

百塔の街として名高い中世都市・プラハ。 しかしこの街にも市壁はもうない。 1760年、旧市街を囲んでいた市壁は取り壊され、前面の濠の埋め立てに使われてしまった。 この火薬塔は旧市壁の名残であり、その前の大通りは「ナ・プシコピェ通り(お濠の上に通り…

インド・アーグラフォート城壁

北インドの都市・アーグラーはムガール帝国の首都。 タージマハルがあることで有名だが、ムガール皇帝の居城・アーグラフォート(要塞)も世界遺産に指定されている。 赤い砂岩で築かれた城壁から「赤い城(ラール・キラー)」とも呼ばれている。2001年訪問。

キューバ・ハバナのモロ要塞

キューバの首都、ハバナは旧市街・ハバナビエハと四つの要塞が世界遺産に指定されている。 これはそのうちの一つ、モロ要塞。スペイン統治時代の1589年、イギリスの海賊(かの有名なドレーク船長)対策として築かれ、現在では市街からは733mの海底トンネルで繋…

ソウル・東大門(興仁之門)

李朝・漢城の4大門の一つ、東大門。 唯一甕城が備えられている。文禄の役時には、ここから小西行長が入城した。漢城(ソウル)は李朝の都城であり、当然東大門両脇からは城壁が伸びていたわけだが、日本統治時代に取り払われた。南大門に関しては昨年放火によ…

ウィーン市壁

ウィーンの市壁は1858年、フランツ・ヨーゼフ1世皇帝によって撤去された。 2度にわたるオスマントルコの包囲に対抗するため西欧世界指折りの堅固な市壁となっていた。上:ウィーン歴史博物館の模型。 中:古地図。 中2:城壁・城濠撤去中の古写真。1863年。 …

西安市壁

中国・西安の市壁。唐王朝の長安の北壁部分に、規模を大幅に縮小して作られた明代の建築。 府城レベルの城壁がほぼ完全に残っており貴重。2005年3月訪問。

チュニジア・スース市壁

北アフリカ・チュニジアの地中海沿岸に広がる貿易都市・スース。 その城壁はリバトと呼ばれる要塞と一体化している。 2006年GW訪問